類が好きなのは、このキャベツ巻だ。柔らかくなるまで蒸した半切りのキャベツの隙間に、塩胡椒した挽肉をぎっしりと詰めて蒸し煮にしてある。コンソメで味を調えたスウプの中にそれは置かれていて、蠟燭の灯で艶光りしている。
子どもの頃のクリスマスの夜の食事風景。俵状のロールキャベツではなく、大きな半球状のものを切り分けて食べているようだ。「類、キャベツ巻を切ってやろうか」という鷗外の発言も出てくる。
そういえば先日、懐かしいものを食べました。シュウ・ファルシという仏蘭西の昔ながらの家庭料理で、そんなものを出す食堂があるんです。ナイフで切って驚きました。まだパッパが元気だった頃に、お母さんが時々拵えていたキャベツの肉詰めでした。クリスマスによく食べましたね。あれは独逸の料理かと思っていましたが、仏蘭西でしたよ。
類が杏奴とともにパリに留学したときに食べたロールキャベツ。類にとっては父の思い出につながる食べ物だったのだろう。
https://www.e-gohan.com/recipes/5026/
そう、ロールキャベツは記憶と深く結びつく食べ物なのだ。