2025年02月11日

八木澤高明『忘れられた日本史の現場を歩く』


北海道から九州まで全国19か所を訪れて、その土地に関する出来事を追ったドキュメンタリー。

「拝み屋が暮らす集落」(高知県香美市)、「人首丸の墓」(岩手県奥州市」、「無戸籍者たちの谷」(埼玉県秩父市ほか)など、歴史の表舞台には出てこない話を、著者は好んで取り上げている。

明治から昭和の戦前にかけて、日本から主にアジアに出て体を売った娼婦はからゆきさんと呼ばれた。ちなみにアメリカで体を売った娼婦たちのことは、あめゆきさんと言った。当時、日本人の女性が海外で体を売ることは珍しいことではなかった。
その地図では、アイヌが暮らした場所を、「\村(えぞむら)」と記している。地図によれば、弘前藩の領地には五ヶ所の\村があった。ケモノ偏に犬とは人間ではないようで、何ともひどい呼称だが、江戸時代のアイヌに対する感覚が如実に表れている。
五島列島は東京を中心とすれば、日本の外れとなってしまうが、東シナ海というアジアの海の回廊を中心にすれば、古代から日本の玄関口であった。その回廊によって、キリスト教も戦国時代の日本へと伝わった。

興味深い話が多くカラー写真も雰囲気をよく伝えているのだが、1か所あたり6〜8ページという分量で終ってしまうのがもの足りない。さらに深掘りした詳しい話を聞きたくなった。

2024年6月5日、辰巳出版、1600円。

posted by 松村正直 at 23:43| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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