1990年代前半と2020年代とを比較して、この30年の間にどのような変化があったのかを各都道府県別に記した本。人口、産業、歴史、交通などに加えて、地方百貨店、民放テレビ局、進学校の実績などの動向もデータで示している。
学校で習ったことや漠然と抱いていたイメージとは異なる現状に驚かされることの多い内容だった。
「札仙広福」という言葉がある。東京、大阪、名古屋の三大都市圏に次いで、札幌、仙台、広島、福岡の4都市が、地方としては群を抜いているためである。
90年頃の教科書までは、更新世は洪積世、完新世は沖積世と呼ばれていた。
現在の50歳くらいのひとを境に知っている、知らないが分かれるものに「忠臣蔵」がある。
日本全国での果実の収穫量は、30年前に比べて、ほとんどの種類で減少している。93年比で21年の収穫量は、リンゴ0.65倍、ミカン0.50倍、ブドウ0.64倍、モモ0.62倍、梨0.48倍だ(…)
児島周辺に学生服の会社(工場)が集中したのは、80年代くらいの教科書には書かれていた児島湾の干拓と関係する(90年代の教科書ではふれられていない)。
80年代くらいまで、日本には京浜、中京、阪神、北九州の四大工業地帯がある、と教えられてきた。(…)現在の教科書によれば、京葉工業地域、北関東工業地域、瀬戸内工業地域との用語が登場し、これら各工業地域の出荷額は約30〜40兆円(18年)。いずれも北九州工業地帯の約10兆円より数倍も多い。
佐賀市の東側、神崎市と吉野ヶ里町にまたがる丘陵で、89年吉野ヶ里遺跡の発見が報道された。(…)それまでの教科書では、弥生時代の遺跡としては、登呂遺跡(静岡県)の記述が代表的だったので、主役が交代した形となった。
サツマイモは22年鹿児島県21.0万t、茨城県19.4万tで、近年生産量では鹿児島県は茨城県に猛迫されている。茨城県のサツマイモはベニアズマが多く、生食用が大半。鹿児島県のサツマイモはコガネセンガンが多く、焼酎の原料となるアルコール類用が約50%を占める。
各都道府県の人口動態を見ると、県庁所在地やその周辺のベッドタウンに30年で人口が大きく偏ってきたのがよくわかる。日本列島を人体に喩えると、太い血管にだけ血が流れていて毛細血管はもう干からびているような状態だ。
2024年1月21日、実業之日本社 じっぴコンパクト新書、1200円。
50歳未満の人が「忠臣蔵」を知らないという話にはびっくり。でも現在40歳ぐらいの会社の後輩が関西生まれであるにも拘らず、宝塚がもともと温泉地だったということを知らず、驚いたことがあります。
「京葉工業地帯」は、1974〜75年ごろ(私が小学校5〜6年生の時)すでに学校の授業で出てきました。地域≠ナはなかったと思います。ただ新しい用語だったので、教科書以外の既存の本や資料を調べても、まだ掲載されていませんでした。
洪積世については、「学会でも長い間使われてきた用語だったが、非科学的なノアの洪水伝説に由来する名づけだったので使用されなくなり、教科書でも変更になった」と書かれていました。
手元の「広辞苑」を引くと、「→更新世に同じ。氷期に広域をおおった氷床の堆積物を大洪水の堆積物と誤認したところからの名」とあります。
「洪積世」の「洪」は「洪水」の「洪」だったんですねえ。そのことも今回初めて知りました。