小説を読む楽しみはいろいろあると思うが、村上春樹の場合、会話の随所にあらわれる箴言のようなものに惹かれる。
でも私は思うんだけど、生まれる場所と死ぬ場所は人にとってとても大事なものよ。もちろん生まれる場所は自分では選べない。でも死ぬ場所はある程度まで選ぶことができる。
思い出はあなたの身体を内側から温めてくれます。でもそれと同時にあなたの身体を内側から激しく切り裂いていきます。
人間にとってほんとうに大事なのは、ほんとうに重みを持つのは、きっと死に方のほうなんだろうな、と青年は考えた。死に方に比べたら、生き方なんてたいしたことじゃないのかもしれない。
この小説にはさまざまな登場人物が出てくるけれど、最も魅力的だったのはナカタさんかもしれないな。
2005年3月1日発行、2024年11月10日55刷。
新潮文庫、950円。