2025年01月04日

桑原憂太郎『現代短歌の行方』


第40回現代短歌評論賞を受賞した著者の初めての評論集。

全体が三章に分かれていて、Tは現代口語短歌に関する評論、Uは時評集、Vは歌論集となっている。日本語文法や物語論を踏まえた分析が随所に見られ、説得力のある内容となっている。

現在、様式化していると思われる特徴的な技法として、1動詞の終止形、2終助詞、3モダリティ、の三つの活用による技法について取り上げる。
近代短歌が「静止画的リアリズム」で、現代口語短歌が「動画的リアリズム」だとして、では、なぜ、現代口語短歌はこんな「動画的リアリズム」の手法をとることになったのか。
「私」のことを詠っていれば、〈私性〉ということにはならない。いくら実体験であろうが、短歌文芸で〈私性〉を彫琢するには、そのための技法というものが必要になる。
現代口語短歌には、こうした〈語り手〉の語りと〈主体〉の「心内語」の混然が現時点で確認できる。こうした〈私〉の混然は、少なくとも小説世界の文体では出現していないだろう。

あとがきに「しばらくは書くことが尽きることはないから、これからも短歌の世界で、あれやこれやと書き続けることになるのだろう」とある。今後のさらなる活躍が楽しみだ。

2024年9月30日、六花書林、2400円。

posted by 松村正直 at 19:55| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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