副題は「幻の文芸誌『樹木と果実』から初の『啄木全集』まで」。
石川啄木との関わりを中心に、土岐哀果(善麿)の業績について記した本。1978年に『石川啄木全集』(新訂増補決定版、全8巻、筑摩書房)が刊行されて以降途絶えている新たな啄木全集への期待も述べられている。
最後に、改めて第三次の『啄木全集』の出版が望まれる、ということである。とはいってもこれは並大抵なことではない。なによりこの大事業を引き受けてくれる人物がいるだろうかということ、また全集は莫大な費用を要する。出版不況の現在ではこの事業を引き継いでくれる出版社はないだろう。
啄木に限らず、「全集」が出版できるのかという問題は、今後ますます深刻になっていくにちがいない。
全体に良い内容の本なのだが、誤記や誤植が多いのが惜しまれる。10か所、20か所くらい軽く見つかる。もっと丁寧に校正を行ってほしいものだ。
2017年5月24日、社会評論社、1700円。