門の前の通りは大勢の観光客で賑わっているが、境内にはほとんど人がいない。ひっそりと静まり返っている。
橋寺にいしぶみ見れば宇治川や大きいにしへは河越えかねき
1982年の歌会始の題「橋」に応じて詠まれた歌で、第5歌集『照徑』に収められている。碑を見ると濁点は省かれ、結句の「かねき」は万葉仮名で「賀祢吉」と刻まれている。
この歌碑の近くに、宇治橋の由来を記した「宇治橋断碑」(重要文化財)が立っている。東屋のようなものの中に入っているが、見学料500円を納めると鍵を開けて中を見せてもらえる。
写真撮影は不可だが、住職さんがとても詳しく解説してくださるのでおススメです。
大化2年(646年)に宇治橋が架けられた由来を記した石碑で、よく見ると2つに割れている。上側の約3分の1が建立当初のもので、下側の約3分の2は江戸時代に補われたものとのこと。
浼浼横流 其疾如箭
(べんべんたるおうりゅう そのはやきことやのごとし)
に始まる96文字が刻まれ、宇治川の流れの速さと人々の渡る苦労、そして橋の完成を喜ぶ思いが記されている。
上田三四二もこの碑を見て、かつての宇治川の光景に思いを馳せたのであった。