残りすくなきいのちと詠まれし老人は牧水よりも長く生きけむ
この歌の元になっているのは次の歌。
老人(としより)のよろこぶ顔はありがたし残りすくなきいのちをもちて
/若山牧水『山桜の歌』
牧水が1921(大正10)年に上高地を訪れた時の歌で、「わが伴へる老案内者に酒を与ふれば生来の好物なりとてよろこぶこと限りなし」という詞書が付いている。牧水も酒好きだったので、ガイドの喜びようが胸に沁みたのだろう。
牧水はこの旅から7年後、1928(昭和3)年に43歳という若さで亡くなる。「残りすくなきいのち」であったのは、むしろ牧水の方だったのかもしれない。