副題は「再生・日本製紙石巻工場」。
2014年に早川書房から刊行された単行本の文庫化。
東日本大震災で浸水し瓦礫や土砂で甚大な被害を受けた製紙工場が、再び稼働するまでを追ったノンフィクション。
長らく積読になっていたのだが、先日著者の佐々涼子さんが亡くなったというニュースを見て読み始めた次第。綿密な取材と確かな筆力の感じられる作品で、他の本もまた読みたくなった。
読書では、ページをめくる指先が物語にリズムを与える。人は無意識のうちに指先でも読書を味わっているのだ。
工場内には、たくさんの高圧電線や、燃料、水などのパイプが走っている。これを地下に埋設すると、交換のたびにいちいち掘り返さなければならないので、手間がかかる。そこで工場では、空中に無数のパイプが渡してあるのだ。
「文庫っていうのはね、みんな色が違うんです。講談社が若干黄色、角川が赤くて、新潮社がめっちゃ赤。普段はざっくり白というイメージしかないかもしれないけど(…)」
昔、図鑑や写真集は重くて持ち運びに不便だった。だが、最近は写真入りの書籍も雑誌も、写真やイラストの色が非常に美しいままで、昔よりも遥かに軽くなっている。これは、紙の進化によるものなのだ。
紙の生産から本の流通に至るまでの話が詳しく載っているのも興味深い。電子書籍に対して「紙の本」と言うことがあるけれど、確かに紙がとても大事なのであった。
2017年2月15日、ハヤカワノンフィクション文庫、740円。