副題は「特殊清掃の現場をたどる」
2019年に毎日新聞社より刊行された単行本の文庫化。
年々増加する孤独死の現場と、そこで働く特殊清掃の人々を描いたノンフィクション。孤独死予備軍が1000万人にのぼると言われる現代社会の姿がリアルに浮かび上がってくる。
近年、孤独死はもはや特殊な出来事ではなくなってきている。年間約3万人と言われる孤独死だが、現実はその数倍は起こっていると言う業者もいるほどだ。
ゴミを溜めこんだり、必要な食事を摂らなかったり、医療を拒否するなどして、自身の健康を悪化させる行為をセルフネグレクトと呼ぶ。ニッセイ基礎研究所によると、孤独死の8割がこのセルフネグレクト状態にあるとされている。
孤独死の4件中3件が男性なんです。単身、離婚で孤独になるんです。女の人って、何かと人間関係を作るのがうまいけど、男の人って何かで躓くと、閉ざしちゃうんですよね
とても他人事とは思えない。
「孤独死を防ぐためには、人と人との繋がりを取り戻すこと」という提言もあるが、それはなかなか難しい。孤独死を減らすよりも、むしろ安心して孤独死できる社会を目指す方が現実的かもしれない。
沢瀉(おもだか)は夏の水面の白き花 孤独死をなぜ人はあはれむ/雨宮雅子『水の花』
2024年7月30日、毎日文庫、900円。