第11回現代短歌社賞を受賞した作者の第1歌集。
わたしたち、って主語をおおきくつかってることわかってて梔子の花
なんでこんなに暑いんだっけドトールの気をゆるしたらやられる感じ
そばかすをコンシーラーで隠さずにドリンクバーでたまに触って
ぶかぶかのTシャツを着るひとのではなくじぶんので過去はたまねぎ
テーブルががたついていてレシートをたくさん挟んできたまま帰る
それからは専門学校生としてひとのからだを曲げて暮らした
車から降りてくるひとおおすぎて、乗りなおすことができなさそうだ
夕暮れに鳩とんできて空欄に自由記述をながく書いてる
ゆっくりと値札を剥がす家族には言えないことを思い浮かべて
イベントの後のけだるさたこ焼きのために切られたぶつぎりの蛸
1首目、若干の後ろめたさを感じながら話す。結句の収め方がいい。
2首目、くらくらするような暑さ。下句の軽快な言い回しが楽しい。
3首目、隠さないことで前向きに捉えることができ、愛着も覚える。
4首目、伸び切ったのか、体形が変化したのか。結句がおもしろい。
5首目、一度挟んだら帰る時にわざわざ取り外したりしないものだ。
6首目、整体師や理学療法士になる学校か。散文のような文体の妙。
7首目、バスなどでも相当たくさんの人が一台に乗っていたりする。
8首目「はい・いいえ」や番号ではとても答えられない思いがある。
9首目、上下の取り合わせに実感がある。わずか数秒の話だけれど。
10首目、たこ焼きになれなかった蛸はこの後どうなるのだろうか。
2024年4月29日、現代短歌社、2500円。