西崎憲編訳。副題は「ヴァージニア・ウルフ短篇集」。
19篇の短篇小説と3篇のスケッチを収めている。
「ラピンとラピノヴァ」「乳母ラグトンのカーテン」「サーチライト」「キュー植物園」「徴」が、特におもしろかった。
次々と思い浮かぶ連想を書き連ねる手法に特徴があって、どこまでが現実でどこからが幻想かわからない味わいがある。
フェミニズム的な観点がはっきりと記されている点も見逃せない。
現実のその種のさまざまなものや標準的なものにいま取って代わっているのははたして何だろうか? それはたぶん男性だ。もしあなたが女性だとしたら。男性の視点、それがわたしたちの生活を統治している。それが標準を決めている。(「壁の染み」)
巻末に編訳者による解説「ヴァージニア・ウルフについて」(45ページ分)があり、ウルフの生涯や作品の特徴を丁寧に記している。
2022年2月5日、亜紀書房、1800円。