戦時中に小笠原諸島の母島や父島の部隊にいた祖父を持つ著者が、3度にわたり硫黄島戦没者遺骨収集団に参加するとともに、今も約1万人の日本兵の遺骨が見つからない問題を追求したノンフィクション。
硫黄島は、激戦から七十余年を経て、焦土の島から、ジャングルの島になっていた。
硫黄島戦は、遺児の悲劇を多く生み出した。兵士の多くが、全国各地から集められた30代、40代の再応召兵だったからだ。
収集団には化学さんと弾薬さん以外にも同行するスペシャリストがいた。人類学者や考古学者ら「鑑定人」と呼ばれる人骨の専門家たちだ。
著者は硫黄島戦の戦没者遺児である三浦孝治氏や硫黄島の戦闘の生き残りである元陸軍伍長の西進次郎氏、参議院議長で元日本遺族会会長の尾辻秀久氏などに取材を行い、また、情報公開請求によって過去の遺骨収集派遣団の報告書を入手するなど、地道な調査を続けていく。
その結果判明したのは、硫黄島が戦後1968年までアメリカの占領下に置かれただけでなく、返還後も核の持ち込みをめぐる密約が交わされ、現在もなおアメリカ軍の戦略拠点や軍事訓練場となっている事実である。そのため、日本の民間人の帰島はもちろんのこと、立ち入りも厳しく制限されている。
そう、硫黄島では今もまだ戦争が続いているのであった。
2023年7月25日第1刷、2024年1月29日第7刷。
講談社、1500円。