1970年から72年にかけて各地の療養所に暮らす傷痍軍人を取材した写真集。版元が先月末で廃業したので今後は入手が難しくなるかもしれない。
脊髄に障害を負った元兵士が暮らしていた「国立箱根療養所」(現・国立病院機構箱根病院)や精神を病んだ元兵士のいた「国立武蔵療養所」(現・国立精神・神経医療研究センター)・「国立下総療養所」(現・国立病院機構下総精神医療センター)など、今では知る人の少ない施設の様子が写真に収められている。
元皇軍兵士であった傷痍軍人たちが、社会から疎外されたまま、にもかかわらず必死に生きていたことはまぎれもない事実なのだ。彼らは「皇軍」が人間をどのように扱ったのかの生きた証拠として、黙々と「戦後」を告発し続けていたのだ。
著者は2006年にその後の様子を追加取材しているが、傷痍軍人の多くは既に亡くなっていた。
2017年6月30日、こぶし書房、2000円。