2024年06月30日

『やちまた』の続き(3)

本を読んでいると、別々の出来事がふいにつながる時がある。

四月に墨水書房から出た佐佐木信綱著『盲人歌集』(…)には、春庭の『後鈴屋集』が紹介された。(…)『盲人歌集』は日本盲人文学史の要約のようなおもむきがあり、わたしはそのころ出た本のなかでもっとも深い感銘をおぼえた。

昭和18年刊行の『盲人歌集』には歴史上の盲目の人の歌とともに、戦傷によって失明した兵の歌も載っている。そこには私が今もっとも関心を持っている村山壽春の6首も含まれている。

その席で一番いきいきして、意気のあがっていたのは腸であった。娘の手前もあったのであろうが、その会の直前の七月、かれが多年書きためていた戦争体験『ニューギニア戦記』が河出書房新社から出版され(…)

腸(俳号)は足立巻一の親友で学生時代に同居生活を送った人物。それが金本林蔵だったのだと下巻の半ばを過ぎて初めて知った。

金本林造『ニューギニア戦記』
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000039-I1673714

確かにあとがきを見ると「この記録を書くことを切にすすめてくれたのは、三〇年来の親友、足立巻一であった」とある。

美濃は春庭の妹のうちでもっとも学問好きで達筆であった。春庭が失明したために『古事記伝』の版下が遅れたとき、巻二十五から巻二十九も書いたし、(…)終始実家に出入して兄のために代筆代読をつとめたらしく、後半生を春庭のことばの探究と終始同行した。

失明後の春庭は、妹の飛騨や美濃、妻の壱岐らの助けを借りて文法の研究を続けた。代筆代読だけでなく、日常生活のさまざまな面でサポートを受けたことだろう。そこからは、正岡子規を支えた妹の律のことなども思い出される。
https://matsutanka.seesaa.net/article/417163506.html

posted by 松村正直 at 23:27| Comment(0) | ことば・日本語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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