疾風に胸を圧されて自転車を漕ぎなづみゐる女学生ひとり
/大辻隆弘『橡と石垣』
疾風を押しくるあゆみスカートを濡れたる布のごとくにまとふ
/上田三四二『遊行』
「疾風+女性」というモチーフに共通したものがある。
米国大統領来日
天皇と天皇に身体二倍なるドナルド・トランプ歩みゆく様
/大辻隆弘『橡と石垣』
わが妻のからだ五倍なる小錦が土俵を去りしのちのしづかさ
/小池光『静物』
「身体(からだ)○倍なる」はかなり目立つ表現で印象的。
ひと厭ふこころにあゆむ川の辺は楢のこずゑの夕しづむ音
/大辻隆弘『橡と石垣』
連結を終りし貨車はつぎつぎに伝はりてゆく連結の音
/佐藤佐太郎『帰潮』
文脈上のねじれを伴う歌。大辻が「浮遊する「は」」と名付けた手法である。