早く歌集を出すようにとくり返し励ましてくださった岡井隆先生、小高賢さん、亡くなられたあとに出すようなことになり、慙愧に堪えません。
岡井隆は黒木の先生なのでよくわかるが、小高はなぜ黒木を励まし続けていたのだろう。
そんなことを考えていたら、小高賢編著『現代の歌人140』(2009年)のこんな文章に出会った。
性愛を卓抜な喩とし、一九九一年の湾岸戦争を鮮やかに主題化した黒木の歌集『クウェート』が刊行されたのは、一九九四年だった。いまでも、たびたび引用されるように時代を画する歌集の一冊である。
ところがその後、黒木は歌集を上梓していない。もう十五年もたつ。会うたびに、どうなっているのかと、まるで責めるように追求するのだが、なかなか踏み切らない。『クウエート』の後であるから、躊躇する気持も分からないではないが、やはりあまりにも間があきすぎてしまった。こうなったら二、三冊、続けざまに出すほかはない。それくらい待望されているのである。
熱烈なラブコールと言っていい。それだけ黒木の歌を高く評価していたということだ。
『現代の歌人140』は小高の選んだ歌人140名のアンソロジーだが、すべてに小高の鑑賞文が付いている。あらためて読み直してみると、それは140名それぞれに宛てた小高の手紙のようでもあるのだった。