1988年に「週刊朝日」に連載され翌年に単行本として刊行された本の文庫新装版。
今年、徳島にも和歌山にも出かけたのでこの1冊を読んでみる。行ったことのある場所が出てくると、やはり読んでいて楽しい。
徳川の世では、淡路は阿波徳島の蜂須賀家の領地だったのである。
現在は兵庫県に属している淡路島だが、その名の通りかつては徳島県とのつながりが深かった。本書の書かれたのは大鳴門橋(1985年)開通後の様子だが、その後に明石海峡大橋(1998年)ができて、また状況は変ったことだろう。
明治のころの徳島県の人口はざっと八十万人ほどで、いまも八十二万数千人であり、ふえたぶんだけ阪神方面が吸収しつづけていたことになる。
それから36年。現在の人口は約68万8千人となっている。
経典が中国訳されるとき、当時の翻訳者はダイヤモンドを具体的に知らぬままに金属のように硬い≠ニいう連想から、金剛という訳語をつけた。
古い日本語では、おなじ平地でも、水田ができる土地を野といい、そうでない土地を原といったが、小笠原はその典型的な地名である。
小牧・長久手のときの家康がさそった有力な同盟者のひとつが、紀州だった。雑賀(さいか)党という紀ノ川下流の地侍連合と、根来衆である。
時おり挟まれる作者と須田画伯とのやり取りも楽しい。何かに似ていると思ったら、いとうせいこう&みうらじゅんの「見仏記」シリーズだった。
蘊蓄を語る司馬と直感の冴える須田。なんだか司馬遼太郎≒いとうせいこう、須田剋太≒みうらじゅん、のようなのだ。
2009年3月30日(新装版)第1刷、2014年6月30日第3刷。
朝日文庫、680円。