副題は「一流の田舎を創造する」。
「ハイバリュー・ローインパクト」「SLOCシナリオ」「越境学習」の3つの観点から、都市部以外でのビジネスのあり方を検証した本。著者は『里山資本主義』で知られる藻谷浩介の兄の妻。
紹介される自治体は「熊本県山都町」「石川県能都町」「北海道岩見沢市美流渡地区」「島根県大田市大森町」「新潟県十日町市」「北海道東川町」「山梨県小菅村」。
実際に酒蔵見学をやってみると、観光客は無料の試飲を楽しんでも、肝心の日本酒をなかなか買ってくれない。酒粕を利用して製造販売している漬物を買うぐらいで、平均客単価はわずか500円程度だった。
人口8522人の東川町は、この25年間で人口が20%も増えている全国でも稀有な町である。現在では、町の人口の約半数が移住者であるという。
日本酒の消費量は1973年の177万キロリットルをピークとしてその後は下がり続け、現在はピーク時の3分の1以下になっている。かつて全国に4000社あったといわれる酒蔵も、現在は1400社ほどまでに減少している。
取り上げられているのは成功した事例ばかりで前向きな内容となっているが、本当は失敗した事例も数多くあることだろう。その両方の分析が必要なのではないかと感じた。
2022年10月20日、新潮新書、780円。