国学に関する初心者向けの概説書。一つのトピックにつき見開き2ページで書かれていて読みやすく、理解が進む。
最近、和歌・短歌史や近代日本の成り立ちを考える際に「国学」がキーワードの一つになることに気づいて、少しずつ学んでいるところ。
一言で「国学」と言い表される学問は、このように広い範囲を含みます。今日言うところの歴史、文学、文法、語彙、考証、法律、思想など、実に広い土台がある「学際的」な学問でした。
明治十五年には(…)伊勢に皇學館、東京には東京大学古典講習科、また後の國學院の経営母体となる皇典講究所が設立されました。偶然にもこの三校がこの年に創設されています。これらの学校には、国学の伝統を身をもって受けついでいる人々が教師となり、国学の伝統が伝えられることになりました。
国学の興る原因の一つに、和歌の改革があった事は先に述べましたが、歌を詠むということは国学において重要なものだったのです。宣長はその国学の入門書である『うひ山ぶみ』で、歌を詠むことの重要性を説きます。
国学者と狂歌師は、実は密接な関係があるようで、狂歌の歌会なども月に数度開かれたり、添削などの通信教育を受けていたようです。
知れば知るほど面白い世界だと思う。先日展覧会で見た富岡鉄斎も国学を学んでいたらしい。彼が全国を旅したのも、単に美しい風景を見るためだけではなく、各地の陵墓の探索という目的があったようで、まさに国学の世界である。
2006年11月20日第1刷、2017年11月20日第4刷。
戎光祥出版株式会社、1800円。