2024年05月07日

森田良行『時間をあらわす「基礎日本語辞典」』


1989年に刊行された『基礎日本語辞典』から時間に関する項目を選んで再編集・文庫化したもの。

細かな言葉のニュアンスの違いや日本語文法に関する分析など、興味深い記述がたくさん出てくる。

遠い過去をさす「以前」は「将来」と対応し、「以後」とは対応していない。
気が進まないながら不承不承におこなう場合には「さっそく」は使わない。逆に言えば「さっそく」と言うからには、やりたい気持ちがあるから行う≠ニ考えてよい。
一般に、時間の流れに対して「過去/現在/未来」の区切り方をし、ことばの表現においても、過去は「……した」、現在は「……する」、未来は「……するだろう」と使い分けるものと思われている。しかし、日本語の時の表現≠ヘ必ずしも現実の時間の区分「過去/現在/未来」に対応して語の使い分けがなされているわけではない。
「あの選手は毎試合同じ手を使ってくる」これを、「‐ごとに」に変えたら「あの選手は試合ごとに違う手を使ってくる」とした方が自然である。

「過去/現在/未来」に関する誤解には、英語の文法を学ぶ影響が作用している気がする。実際の日本語では「……するだろう」は、推量に使っても未来に使うことはない。「明日買物に行く」であって「明日買物に行くだろう」とは言わない。

2018年2月25日、角川ソフィア文庫、720円。

posted by 松村正直 at 08:52| Comment(0) | ことば・日本語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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