60万部を超えるベストセラーになった本。
「ほんとうはみな家族のことを知らない」「家族は、むずかしい」「家族という病」といった刺激的な章題が並んでいる。
多くの人達が、家族を知らないうちに、両親やきょうだいが何を考え感じていたのか確かめぬうちに、別れてしまうのではないかという気がするのだ。
都会で独居してそのまま亡くなるケースを人々は悲惨だというが、はたしてそうだろうか。本人は一人暮らしを存分に楽しみ、自由に生きていたかもしれない。
「お子さんがいらっしゃらなくてお淋しいですね」という人がいますが、今あるものがなくなったら淋しいでしょうが、最初からなかったものへの感情はありません。
こんな文章を読んで、思い出したのは次の二首。
沢瀉(おもだか)は夏の水面の白き花 孤独死をなぜ人はあはれむ/雨宮雅子『水の花』
子はなくてもとよりなくてさびしさを知らざるわれをさびしむ人は/草田照子『旅のかばん』
いろいろと考えさせられる内容の一冊だった。
2015年3月25日、幻冬舎新書、780円。