副題は「夢のゆくえ」。
昨年、只見町の「たかもく本の店」で購入した本。
沖縄県本部町、北海道別海町、広島県因島市、香取開拓団、福島県三島町を訪れて記したルポルタージュ。それぞれの地で行われた沖縄海洋博やパイロットファーム、造船、開拓、ダム建設のその後を描いている。
このシリーズは20年くらい前に読んだはずなのだが、この1冊は未読だったようだ。
縫製工場が進出する計画もあるが、男の採用にはつながらない。失業地帯に低賃金の縫製工場が進出してくるのは、全国に共通した現象である。一家の主が失業すれば、主婦がはたらきに出なければならない。失業者が多ければ多いほど、パートの希望者がふえ、競争が激しくなって、安い賃金ではたらくようになる。
戦後の「緊急開拓事業」は、一九四五年一一月の閣議決定によるのだが、食糧増産と引揚者や戦災者の帰農対策との一石二鳥を狙うものだった。それはある意味では、戦前の「満州移民」の後始末でもあった。満州に移植させられたひとたちは、命からがら帰国したあと、こんどは「内地」の無人地帯に追放されたのだ。
こうして只見川流域には、東北電力が一三、電源開発が八、あわせて二一の発電所が並ぶことになった。福島県は水力発電のあと、東京電力の合計一〇基の原発を引き受けて、太平洋岸に並べ建て、「原発銀座」をつくりだした。文字通り「電力県」となったのだが、土木工事と交付金による、立地町村の好況は、一瞬のうちに過ぎ、それぞれ過疎地に転落している。
本書に収められた文章が書かれたのは1980年代のこと。それから、さらに約40年の歳月が過ぎた。インタビューを受けた人たちはその後どのような人生を送り、町は今どんなふうになっているのだろう。
2004年5月18日、岩波現代文庫、1000円。