京阪「丹波橋駅」の改札内にあった水嶋書房(先月27日に閉店)で購入した1冊。
古代から近代にいたる伏見(深草・稲荷・桃山・鳥羽・醍醐・淀)の歴史をたどるガイドブック。伏見に住んで23年になるが、まだ知らないことがいろいろとあった。
伏見を知る上で欠かせないのは、この町が、かつて「港湾都市」だったという視点ではないだろうか。現代の私たちからすれば港といえば海辺にあるものと思いがちだが、移動と運輸の主が船だった時代には、水運の要衝は政治・経済・軍事の面から重視された。
伏見を深く知るためのキーワードは「水」。古くは「伏水」とも書き、その字の通り、いまも伏流水(地下水)に恵まれた地です。
明治天皇崩御後、旧伏見城跡に陵墓が造られることになり、大正元年(一九一二)九月に桃山大葬列が行われました。その後も御陵参拝者は多い時には年間三十万人が訪れ、周辺の商店や旅館はおおいににぎわいました。
秀吉はなぜ伏見に城を造ったのか、平安時代の絶対王者・白河院の離宮はなぜ鳥羽だったのか。なぜ龍馬は伏見を拠点にしていたのか。港町というキーワードを知れば、あっけないほどにわかる謎ですが、伏見が港の機能を失って半世紀、巨椋池が姿を消して八十年近い時間が流れる中で、鍵は歴史の中に埋もれ、伏見の本当の魅力は見えにくくなってしまっています。
このところ気温が20度を超す暖かな日が続いている。また伏見のあちこちを散策してみよう。
2015年10月4日、淡交社、1500円。