副題は「絶望の外国人収容施設」。
日本の入管制度の問題点や非正規滞在(不法滞在)の外国人の現状を描いたルポルタージュ。2018年から19年にかけて共同通信に配信された数十本の記事が基になっている。
これまであまり関心を持たずに過ごしてきてしまったので、学ぶことが非常に多かった。2007年から2019年の間に入管施設内では自殺や病気により15名もが亡くなっている。病院に運ばれず亡くなった方もあり、何とも痛ましい。
解体、建設の現場に加え、農業や工場、飲食業……。人手不足が続く産業で、非正規滞在者が働き、日本経済の一翼を担う現実は間違いなく存在する。
元実習生らの例を見ればわかるように、根本には「移民政策は採らない」「単純労働者は受け入れない」と掲げながら、「技能実習」や「留学」という歪んだ制度で外国人の労働力を確保する政府全体の問題がある。
入管施設の収容を経験した外国人の多くは「あそこは無法地帯だった」と話す。一方で、入管庁は「法に従い適切に運営している」と強調する。
外国人労働者や移民に対する日本(政府)の建前と本音の乖離が、日本に来る外国人や現場の入管職員に大きな負担を強いる結果となっているのだ。さらに、そこには外国人に対する差別の問題も複雑に絡んでいる。
この問題については、今後も引き続き関心を向けていきたい。
2020年10月10日、ちくま新書、940円。