2001年から2021年まで20年にわたって兵庫県豊岡市長を務めた著者が、「小さな世界都市」を目指した取り組みについて記した本。
コウノトリの野生復帰や演劇によるまちづくりなど、ユニークな施策を次々と行ってきた経緯やそのもととなる考え方などが詳しく述べられている。
地方創生とは、「より大きく、より高く、より速いものこそが偉い」とする一元的な価値観との闘いであるとも言えます。豊岡は、「深さ」と「広がり」を極めていこうと努力を重ねてきました。
ある建物が壊されてなくなると、そこに何があったのか思い出せない、ということがしばしばあります。古くなったものが絶えず壊されていくまちづくりは、記憶喪失のまちを作るようなものだと、私は思います。
印象に残ったのは、いろいろな面で言葉を大切にしていること。「コウノトリも住める環境を創ろう」というスローガンは「コウノトリが」ではなく「コウノトリも」であるところが大事だと著者は言う。
こうした言葉へのこだわりや言葉の持つ力への信頼は、本書のいたるところから感じられる。
まちづくりは、手紙を書いているようなものだと思います。その宛先は、子どもたちです。
豊岡にまた行ってみたくなってきた。
2023年6月21日、集英社新書、1000円。