「ミケは猫だ」という簡単な文をスタートに、意味とは何か、固有名とは何か、言語とは何か、といった問題に深く迫っていく言語哲学の入門書。
二〇世紀の哲学を特徴づける言葉として「言語論的転回」と言われたりもします。哲学の諸問題は言語を巡る問題として捉え直されるべきだとして、言語こそが哲学の主戦場だと見定められたのです。
こうした認識のもとに、主にフレーゲ、ラッセル、ウィトゲンシュタインの3人の思考の道筋をたどっていく内容となっている。
扱っているのは難しいテーマなのだが、著者は一つ一つ噛み砕くように説明し、ともに考え、読者を導いてくれる。また、時には「考えるマーク」を挟んで、読者に自分の頭で考えるよう促したりもする。
哲学は思考の実験場のようなものですから、ある前提を引き受けたならば、それをいわば純粋培養して、その前提の正体を見きわめようとします。
語の意味は、文以前にその語だけで決まるのではなく、文全体との関係においてのみ決まる。これが文脈原理です。
いま向こうに見えている「あれ」が「富士山」なのではなく、「あれ」を「富士山」と認定させる知識が「富士山」という語の意味なのではないでしょうか。
最後まで読んでくると、ウィトゲンシュタインに対する興味がぐんぐん湧いてくる。いきなり『論理哲学論考』を読むのは無理だろうから、とりあえず野矢茂樹『ウィトゲンシュタイン「論理哲学論考」を読む』を読んでみようかな。
最初に野矢さんの名前を知ったのは20代の頃に読んだ『無限論の教室』だった。それ以降、何冊か読んだけれどどれも面白い。
https://matsutanka.seesaa.net/article/387138366.html
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2023年10月20日、岩波新書、1000円。