2024年02月13日

「うた新聞」2024年2月号

松澤俊二さんの連載「短歌(ほぼ)百年前」に、矢沢孝子『湯気のかく絵』という歌集が取り上げられている。宝塚歌劇を詠んだもので、「宝塚叢書」の第三篇として歌劇団の出版部から刊行されているとのこと。

美(くは)し少女(をとめ)くもゐしのはら化粧(けはひ)すとけはひおとすと入る温泉(いでゆ)かも
松子てふ名をおぼえたるその日よりわが好む子をきみとさだめぬ

団員の雲井浪子、篠原浅茅、高砂松子を詠んだ歌が引かれている。

このタイトルはどこかで見た覚えがあるなと思ったら、以前『宝塚少女歌劇、はじまりの夢』を読んだ時に目にしたのであった。
https://matsutanka.seesaa.net/article/499484425.html

これによると「歌劇」大正8年1月号に掲載された高安やす子の短歌のタイトルが「湯気のかく絵」なのだった。これは一体どういうことだろう?

矢沢孝子『湯気のかく絵』は国会図書館デジタルコレクションに入っているのでざっと読んでみたけれど、「湯気のかく絵」という言葉は歌には使われていない。タイトルだけ借りたということなのか??

posted by 松村正直 at 18:54| Comment(2) | 短歌誌・同人誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
リンク先の2023年5月26日の項にも引用していただいている通り湯気のかく絵≠ニいうフレーズは確かに矢沢孝子のものではなく、高安やす子が詠んだ一連の短歌のタイトル(1首目の第2句に由来)ですね。
私も大いにこんぐらがったのですが、手元にあった当時の人気生徒・高砂松子と初瀬音羽子の共著『紫インキ』の広告ページに「近刊予告」としてこんな記載を見つけました。

此度宝塚叢書なるものを出版することになりました(略)
第三編 歌集 湯気のかく絵 高安やす子/矢澤孝子

つまり歌集『湯気のかく絵』は、もともと高安と矢沢の共著として企画されていたものが、何らかの事情で矢沢の単著となり、その結果高安の湯気のかく絵≠ニいうフレーズだけが、タイトルとして残ってしまったのではないでしょうか。
そんなのアリか??と思いながら、以上私の想像です。

Posted by 小竹 哲 at 2024年02月14日 05:55
小竹さん、コメントありがとうございます。
なるほど、そういう経緯だったのですね。見事に謎が解けました。
『紫インキ』(宝塚叢書第1篇)も国会図書館デジタルコレクションで公開されているので「近刊予告」を確認しました。本の発行日を見ると、

第1篇『紫インキ』大正12年8月1日(四版)
第2篇『日本歌劇概論』大正12年9月1日
第3篇『湯気のかく絵』大正12年12月15日

となっています。『日本歌劇概論』の近刊予告でも高安と矢沢の共著となっているので、単著への変更は急なものだったことがうかがわれます。
Posted by 松村正直 at 2024年02月14日 08:06
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