漫画:田房永子。
副題は「見えない化されている「わたしたち」と、そこにふれてはいけない気がしてしまう「わたしたち」の。」
アイヌにルーツを持つ東京の高校生と北海道の市役所に務める男性の二人を主人公にした漫画を織り交ぜながら、アイヌに対する差別や偏見の問題を論じている。
その際に、アイヌのことだけでなく、女性や障がい者、セクシュアルマイノリティー、外国人なども含めて、差別の構造そのものを明らかにしているのが特徴だ。
実は、マジョリティには自称がないことが多いのです。というのも、マジョリティは自分について問われることがありませんから。
差別的言動は、しばしば差別をすることよりも連帯感を強めることを目的としてなされることもあります。
「マイクロアグレッション」「ステレオタイプ」「公正世界信念」「マンスプレイニング」「文化盗用」「アクティブバイスタンダー」といった概念についても丁寧な説明があるのがありがたい。
「お前と俺は違う(排除)」と「お前も俺も同じだ(統合)」の使い分けは、植民地に共通して起こります。
明治期以後、日本の研究者は日本の優越性/アイヌの劣性という予め決まっている結論に向け、人種主義的な研究を進めることで、植民地主義を正当化してきました。
漫画「ゴールデンカムイ」の映画化や知里幸恵を主人公にした映画「カムイのうた」の公開など、このところアイヌに関する話題を見聞きすることも多い。その際に、私たちはどのように考え、行動していけば良いのか。
近代以降の日本の歴史を考える上でも、また現在の差別の構造を変えていくためにも、知っておくべきことが多くあると感じた。
2023年12月12日、303BOOKS、1600円。