六花書林が毎年刊行している冊子も今年で8冊目。
前号に続いて「詩歌のある暮らし」をテーマに20名がエッセイを書いているほか、連載記事も載っている。私の連載「歌ごよみ」は6回目、六月の日付の入った歌について書いた。全12回の予定なので、これでちょうど半分。
近年、雑誌でもSNSでも早口でせわしない言葉が多く飛び交っているけれど、「六花」の文章はみんな落ち着いていて何とも心地よい。
詩歌とは、自分ではないものを引き寄せる力かもしれない。
/富田睦子「そういう生きもの」
「読む」と「詠む」を同じくヨムという動詞で表現する日本語では、解読することとエンコードすることが同じ行いとして捉えられている。
/泉慶章「スタックしたタイヤ」
俳句という詩は「省略の文学」としばしばいわれる。作者の膨大な経験や思いを色鉛筆で塗りつぶし、塗りつぶし、五七五しか残らなくなるまで斜線を引きまくる作業が常に求められる。ただ面白いのは、塗りつぶされ、斜線の底に沈んだものが熱心な読み手には透けて見えてくる――そんな巧妙な仕掛けが俳句には備わっている気がする。
/柳生正名「塗りつぶす 透けて見える」
今年の夏、青森県三沢市の寺山修司記念館へ行ってみた。予想に反して、実に辺鄙なところにあった。観光のついでに寄ってみる、というような場所ではなかった。記念館の展示を見渡して、寺山の短歌の業績というのは、寺山の人生のほんの一部分にすぎない、ということがよく分かった。
/桑原憂太郎「西勝洋一、前川佐美雄、寺山修司の歌集のこと」
「六花」vol.8 は六花書林から直接購入できます。
http://rikkasyorin.com/rikka.html
2023年12月5日、六花書林、700円。