2023年12月26日

邱永漢『わが青春の台湾 わが青春の香港』


1924年に台湾で生まれ東京帝国大学を卒業、戦後台湾独立運動に関わり香港へ亡命、1954年に再び日本に住むことになった著者の波乱万丈の青春記。

「わが青春の台湾」(1924〜1948)と「わが青春の香港」(1948〜1954)に加えて、友人の王行徳をモデルに書いたデビュー作「密入国者の手記」を収めている。

著者の父は台湾人、母は日本人であった。

同じ屋根の下で育ち、父親も同じなら、母親も同じであるにもかかわらず、私たち十人きょうだいは、姉の素娥、私の炳南だけが本島人で、妹以下は内地人になってしまった。たったこれだけの違いで、同じきょうだいでありながら、私たちの人生は大きく変わってしまったのである。
私は東大の経済学部を受験する決心をしていた。(…)植民地台湾に生まれた私のような人間が将来、文学を志しても生計を立てて行く自信がなかったからである。たいていの本島人のクラスメイトは医学部を志望する。文科系の卒業生でさえ途中から医学部に鞍替えをする。このほうが差別待遇されずに生きて行ける最も安全な道だったからだ。

戦後、日本に代って国民党の支配下に置かれた台湾で、民衆を弾圧する二・二八事件が起きたことは有名だが、台湾独立運動の詳細についてはこの本で初めて知った。

来年1月13日には台湾総統選挙がある。選挙によって自分たちのリーダーを選べることの大切さを、台湾の歴史が何よりもよく示している。

2021年5月25日、中公文庫、900円。

posted by 松村正直 at 08:44| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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