台湾に残る日本統治時代の建物や遺物を紹介した本。
取り上げられているのは、台湾総督府、台北州公共浴場、畜魂碑、宜蘭飛行場跡、和美公学校校内神社、台南駅、竹子門水力発電所、旭村遙拝所、義愛公など。
当然、日本による植民地支配の歴史に深く関わる内容でありデリケートな部分もあるのだが、長年台湾に住む著者ならではの調査力や現地の人々との交流が印象に残る。
いま台湾では郷土史探究が潮流となっている。植民地統治は肯定されるような性格のものではないが、台湾の歴史を考察する上で、日本統治時代の半世紀を無視することはできない。そういった視点を庶民が持ち、戦前の遺構が保存や研究の対象となっているのは興味深いところである。
また、建物や遺物だけでなく、現地で使われている日本語由来の言葉についても記している。「アイサツ(挨拶)」「セビロ(背広)」「テンプラ(さつま揚げ)」など。
2009年3月5日、祥伝社新書、900円。