副題は「故郷を失ったタイワニーズの物語」。2018年に小学館から刊行された『タイワニーズ ― 故郷喪失者の物語』を加筆、改題したもの。
良書。おススメ。
インタビューや資料をもとに、日本で活躍する台湾ゆかりの人々のファミリーヒストリーを描いている。蓮舫(政治家)、辜寛敏(独立活動家)、東山彰良(作家)、温又柔(作家)、ジュディ・オング(歌手)、余貴美子(俳優)、羅邦強(551蓬莱)、安藤百福(日清食品)、陳舜臣(作家)、邱永漢(経営コンサルタント)など。
日本の台湾独立運動は、主に台湾からの亡命者や学生を中心に一九六〇年代に始まった。刊行物「台湾青年」を細々と刊行しながら、台湾独立のための理論を練り上げ、米国のグループとも連携しながら、日本や世界に情報発信を重ねた。
台湾の人々は、中国人から日本人、再び、中国人、そして現在は台湾人へとめまぐるしくアイデンティティを変化させてきた。こうした近現代史は、台湾において、台湾人でもあり、日本人でもあり、あるいは中国人でもあるという特殊な人々を産み落とした。
一九九九年の台湾大地震、二〇〇八年の四川大地震、そして、二〇一一年の東日本大震災。日中台をそれぞれ襲った三度の災害で、ジュディはいずれも支援活動の先頭に立った。
日本の中華料理の受容プロセスでつい見落とされがちなポイントは、日本人と中華料理の間で媒介の役割を果たしたタイワニーズの存在である。
日本と台湾と中国は歴史的に深い関わりを持っている。それは「台湾有事」といった争いの火種になり得る部分でもある一方で、経済・文化・観光などの交流や相互理解の豊かな土壌にもなっている。
いつかまた台湾に行ってみたいな。
2023年8月10日、ちくま文庫、900円。