2023年11月27日

光嶋裕介『これからの建築』


副題は「スケッチしながら考えた」。

住宅、美術館、学校、駅、塔、高層ビル、橋、競技場などの様々な建築について、建築家としての考えを記した本。書き(描き)ながら考え、考えながら書く(描く)。その行為の積み重ねの先に、著者の考える「これからの建築」の姿が浮かび上がってくる。

変わる建築と変わらぬ風景が街に違った時間を同居させていく。「ローマは一日にして成らず」、とは言い得て妙である。魅力ある街の景観は、建築の継承と更新を適度に続けながら、保たれる。
モダニズムの原理の前提として想定された「人間」とは、マジョリティーの健康な人間、それも西洋人であることを忘れてはならない。
教室のなかにみんなと一緒に座っていたひとが教壇に上がって、彼らと同じ方向を向くのではなく、彼らと対面し、語りかけることで、ひとはだれでも文字通り「先生」になる。
スケッチには視覚情報以上に、建築体験そのものの記憶がしっかりと定着されていく。私にとってスケッチは、なにより大切な旅の記録装置となる。だからスケッチを終えると必ずサインを入れる。

3年近く書き続けた末に著者のたどり着いた結論は、「生命力のある建築」というものだ。その実践は「森の生活」(2018年)や「桃沢野外活動センター」(2020年)に見ることができる。

https://www.ykas.jp/works/detail.html?id=167
https://www.ykas.jp/works/detail.html?id=269

2016年9月28日、ミシマ社、1800円。

posted by 松村正直 at 20:49| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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