目を閉じて何も見えず 哀しくて目を開ければ
荒野に向かう道より 他に見えるものはなし
(略)
呼吸(いき)をすれば胸の中 凩は吠(な)き続ける
されどわが胸は熱く 夢を追い続けるなり
(略)
/谷村新司「昴」
呼吸(いき)すれば、
胸の中(うち)にて鳴る音あり。
凩よりもさびしきその音!
眼閉づれど、
心にうかぶ何もなし。
さびしくも、また、眼をあけるかな。
/石川啄木『悲しき玩具』
この2首は実は啄木の自筆ノート(192首)には入っていない。没後に歌集を編んだ土岐善麿が「最初の二首は、その後帋(紙)片に書いてあつたのを発見したから、それを入れたのである」と記している。この2首を加えて『悲しき玩具』は最終的に194首となった。
谷村新司が本歌取り(?)したのは、そんな特別な2首なのだ。


『ウエスト・サイド・ストーリー』の中の「サムウェア」がベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」第2楽章のモチーフを踏まえていることは、作曲者のバーンスタイン自身がどこかで明言していましたが、エリック・カルメンの不朽の名曲「オール・バイ・マイセルフ」の一部がラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の第2楽章を本歌取り≠オているのではないかとかねがね思っています(どなたがご指摘された方はいるでしょうか?)。
音楽にはまったく詳しくないのですが、Wikipediaで「オール・バイ・マイセルフ」を調べると、「最後のリフレインの前の置かれる序奏部分バースはセルゲイ・ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18第二楽章(アダージョ・ソステヌート)を基礎に作られている」と書かれてますね。ご参考まで。
なお「昴」はくだんの元・上司のカラオケの唯一のレパートリーでしたが、あまりお上手ではありませんでした(笑)。現役時代は瞬間湯沸し器≠ナしたが、最後に施設でお会いした時はすっかり丸くなって、歓待してくださいました。