2023年11月04日

谷村新司と啄木

昨日のフレンテ歌会に、先月亡くなった歌手の谷村新司を悼む歌が出た。その時にも少し話したのだが、谷村の代表作「昴」の歌詞は石川啄木『悲しき玩具』の冒頭2首を踏まえている。

目を閉じて何も見えず 哀しくて目を開ければ
荒野に向かう道より 他に見えるものはなし
(略)
呼吸(いき)をすれば胸の中 凩は吠(な)き続ける
されどわが胸は熱く 夢を追い続けるなり
(略)
/谷村新司「昴」
呼吸(いき)すれば、
胸の中(うち)にて鳴る音あり。
 凩よりもさびしきその音!

眼閉づれど、
心にうかぶ何もなし。
 さびしくも、また、眼をあけるかな。
/石川啄木『悲しき玩具』

この2首は実は啄木の自筆ノート(192首)には入っていない。没後に歌集を編んだ土岐善麿が「最初の二首は、その後帋(紙)片に書いてあつたのを発見したから、それを入れたのである」と記している。この2首を加えて『悲しき玩具』は最終的に194首となった。

谷村新司が本歌取り(?)したのは、そんな特別な2首なのだ。

posted by 松村正直 at 15:16| Comment(3) | 石川啄木 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これは見事な本歌取りですね!亡くなった元・上司の持ち歌でした。以下我田引水になることをお赦しください。
『ウエスト・サイド・ストーリー』の中の「サムウェア」がベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」第2楽章のモチーフを踏まえていることは、作曲者のバーンスタイン自身がどこかで明言していましたが、エリック・カルメンの不朽の名曲「オール・バイ・マイセルフ」の一部がラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の第2楽章を本歌取り≠オているのではないかとかねがね思っています(どなたがご指摘された方はいるでしょうか?)。
Posted by 小竹 哲 at 2023年11月04日 21:37
小竹さん、コメントありがとうございます。
音楽にはまったく詳しくないのですが、Wikipediaで「オール・バイ・マイセルフ」を調べると、「最後のリフレインの前の置かれる序奏部分バースはセルゲイ・ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18第二楽章(アダージョ・ソステヌート)を基礎に作られている」と書かれてますね。ご参考まで。
Posted by 松村正直 at 2023年11月05日 08:05
おおお、やっぱりそうだったんですね!ありがとうございました。
なお「昴」はくだんの元・上司のカラオケの唯一のレパートリーでしたが、あまりお上手ではありませんでした(笑)。現役時代は瞬間湯沸し器≠ナしたが、最後に施設でお会いした時はすっかり丸くなって、歓待してくださいました。
Posted by 小竹 哲 at 2023年11月05日 18:34
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