2023年10月31日

雑詠(032)

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うつくしい耳もみにくい耳もある正面だけが顔ではなくて
ひし形の網目にレンズ差し入れて撮る吽形の上半身を
握りこぶしよりも大きなにぎりめし携え秋の近江路をゆく
時代小説読み進めればあらわれる豆腐とみょうがの古きレシート
ハロウィンの飾りの踊る街にいる季節外れの半袖を着て
廊ながき鉱泉宿の褐色の湯にうす蒼きこころをひたす
ゆっくりと燃やさぬように育てゆくまだ輪郭のあわい憎しみ

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posted by 松村正直 at 11:24| Comment(4) | 雑詠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
6首目に詠まれた鉱泉宿が何処か、差し支えなければ教えてください。つげ義春さんの漫画やエッセイに惹かれて東京勤務の3年間、現在ほどネット情報が無い頃でしたが、近隣県に鉱泉を見つけては足を運んでいました。
Posted by 小竹 哲 at 2023年11月01日 05:54
小竹さん、コメントありがとうございます。
今年の夏に訪れた富山の「いなり鉱泉」が発想の元になっていますが、そこに島根の多田温泉や温泉津温泉のイメージが混ざって歌になっています。
Posted by 松村正直 at 2023年11月02日 10:52
早々のご教示ありがとうございました!
映画『ザ・サウンド・オブ・ミュージック』のトラップ家の館が、玄関側と湖側と、別の建物の画を組み合わせているみたいですね(ちょっと違うか・・・)。
Posted by 小竹 哲 at 2023年11月02日 13:25
あっ、でもまさにそういう感じですよ。
先日見た映画「ミステリと言う勿れ」に出てきた屋敷も、倉敷市の旧野崎家住宅がメインで、2階の部屋は前橋市の臨江閣、風呂は厚木市の元湯玉川館、台所などはセットで撮影されたそうです。短歌も似たような作り方をすることがあります。
Posted by 松村正直 at 2023年11月02日 14:56
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