副題は「きらめく台湾」。
『美麗島紀行』に続く台湾紀行エッセイの第2弾。
観光用のガイドブックとは異なり、台湾の人々の日常生活や考え方などを詳しく描いているのがおもしろい。観光客の訪れないような場所にまで足を運び、また、日本統治時代から残る建物や日本語世代のお年寄りにも精力的に取材している。
同じ漢民族同士であっても、かつては日本人として戦争に加わらなければならなかった台湾本省人と、日本と戦った外省人という、「敵と味方」だったもの同士が、同じ島で顔を突き合わせて生きていかなければならないという、皮肉な構図が出来上がった。
ヒョウタンは中国語では「フール―」と言い、その発音が「福禄」と似ていることから、やはり縁起物として好まれるし、コウモリは「ビアンフー」という発音が「変福」の発音と似ていることから、福に変わる、福をなすという縁起物として扱われるのだそうだ。
今の台湾では、中秋節のお約束は何といってもバーベキュー。名月を味わうはずの日に、どうして煙の出るバーベキュー? と不思議に思ったら、焼肉のたれを売っているメーカーが宣伝し始めたのがきっかけと聞いた。
翌日、台風は台湾南部から上陸して島を北上するルートを通り、全島の地方政府が次々に「颱風假(タイフォンジャ)」と呼ばれる台風休暇の宣言を出した。この宣言が出ると、ほとんどの公共交通機関はストップし、学校、会社なども全部、休みになる。
いつかまた台湾に行ってみたいとしきりに思う。
2022年12月1日、新潮文庫、630円。