副題は「つながる台湾」。
2015年に集英社より刊行された本を文庫化したもの。台湾の歴史や文化、日本との関わりに関心を持った著者が、台湾各地を訪ねる紀行エッセイ集。
有名観光地のガイド本などとは違い、あまり知られていない台湾の姿が描かれている。特に、1895年〜1945年の50年間、日本の植民地であった歴史がさまざまな面で影響を残している。
台湾人家庭で家族全員が日本語を話せると認められた家だけが「国語の家」という表札を門柱に掲げられるのだそうだ。(…)当時「国語の家」と認められた家は配給などの面でも日本人と同等の待遇を受けることが出来た。
一つの駅名を「国語(北京語)」「台湾語(閩南語)」「客家語」、そして「英語」という順番でアナウンスしているのだった。中でも三つ目が「客家語」だということは現地の人から教わるまで分からなかった。
台湾では原住民族という表現が正式な呼称になっている。日本人が使う「先住民」という表現の「先」という文字には、祖先、先人、先妻などというように、既に亡くなっている人の意味が含まれるからだそうだ。
「私は、日本時代は木川平録という名前だったんです」
パイワン族としての本来の名前はヴァルワルー。戦後、中華民国政府が入ってきて、呂來謀という名前が与えられた。
台湾には20年以上前に一度だけ行ったことがある。
ぜひまた訪れてみたいものだ。
2021年11月1日、新潮文庫、590円。