副題は「世界の豆探訪記」。
北海道の老舗豆専門店「べにや長谷川商店」に生まれ、現在「べにやビス」代表を務める著者が、世界各国の豆食事情を取材した本。
2012年から2019年に訪れた66か国の中から29の国・地域を取り上げて、どんな種類の豆が栽培され、どんな豆料理があるのかを記している。一口に豆と言っても、大豆、いんげん豆、ベニバナインゲン、リマ豆、ささげ、小豆、緑豆、そら豆、えんどう豆、ひよこ豆、レンズ豆など、実に多彩だ。
メキシコには伝統的農法「ミルパ」があると以前から聞いていた。別名「スリーシスターズ」といい、窒素固定をして土地を肥やす「豆」、豆のツルが這う支柱となる「トウモロコシ」、葉が日除けとなる「かぼちゃ」を組み合わせて植えることで、お互いの生育が助けられる農法だという。
日本で豆料理が日常から遠ざかった原因は、わたしはガスコンロの普及によるものだと思っている。ストーブにかけておけば煮えているようなほったらかし調理ができないので、いつしか豆料理は「手間がかかるもの」になってしまったのだ。
(コスタリカの豆の消費量は)ほかの中南米諸国と比べるとかなり少ない。おそらくタンパク源を肉に依存しているのだろうが、「経済水準と豆の消費は反比例する(=豊かな国のタンパク源は豆ではなく肉)」というから、この傾向が如実にあらわれている。
地方や農村では、今でも豆板醤は自家製で、手前味噌ならぬ手前豆板醤なのだが、最近は手づくり派が減ってきているので、ザオさんの商売も右肩上がりだという。
それにしても著者の「豆」愛はすごい。知らない豆や豆料理があると聞くと、世界のどこへでも行き、畑や台所を見て、現地の人の話を聞き、実際に料理を食べてみる。その好奇心と探究心に感心する。
2021年12月15日、農山漁村文化協会、2200円。