「歌人入門」シリーズの8冊目。
副題は「光と影を含む多様な歌世界」。
与謝野晶子の短歌100首を取り上げて鑑賞・解説をした本。大きな特徴はテーマ別に12の章に分けられていること。「恋」「十一人の子の母として」「社会を見る眼差し、都市生活者の思い」「西洋との遭遇、旅と思索」など。
初めて知る歌もあって、晶子に対する興味がまた増してきた。
秋来ぬと白き障子のたてられぬ太鼓うつ子の部屋も書斎も/『青海波』
腹立ちて炭まきちらす三つの子をなすにまかせてうぐひすを聞く/『青海波』
花瓶の白きダリヤは哀れなりいく人の子を産みて来にけん/『さくら草』
女より智慧(ちゑ)ありといふ男達この戦ひを歇(や)めぬ賢こさ/『火の鳥』
ついと去りついと近づく赤とんぼ憎き男の赤とんぼかな/『朱葉集』
このシリーズは右ページに短歌1首、左ページに250字程度の鑑賞となっていて、とても読みやすい。まさに入門編として最適だと思う。
2023年7月7日、ふらんす堂、1700円。