「島根県塔短歌会員有志」8名による同人誌。
連作5首とミニエッセイ、題詠「北」とその歌評が載っている。
たまごやきもっていこうね まだ冬とよばれる日々にもひなたはあって/日下踏子
どこかにピクニックに出掛けるような楽しい気分。ひらがなの多さが相手との穏やかな関係を感じさせる。
白線を見ながら歩く 正しいことばかりしているわけじゃないこと/上澄 眠
道路に引かれた真っ直ぐな白い線は正しさを感じさせる。でも、人生はなかなかそうはいかないもの。
小学校で一番地味な場所だった西側校舎の石炭置き場
/小山美保子
地味だったのに何十年経っても忘れられない記憶として残っている。きっと好きな場所だったのだろう。
声が聞きたい だからといって覗いてはだめだよ昼の製氷室を
/田村穂隆
ダメと言われるとかえって覗きたくなってしまう。製氷室の中には一体どんな声がうごめいているのか。
千一羽折ってしまった鶴一羽折り紙に解く 赦してあげる
/丸山恵子
人間の願いや祈りが込められているから、千羽鶴はたぶんしんどい。だから折り紙に戻すのは解放なのだ。
題詠「北」の歌評を見ると、お互いの作品をよく読み込んでいることがわかる。第4回BR賞でも、日下踏子さんが田村穂隆『湖とファルセット』を取り上げた書評が佳作に入っていた。
今のところ同人誌「北公園」は単発の発行のようだが、2号、3号とぜひ続けて欲しい。
2023年2月26日、北公園編集委員会。