2015年から頻繁に京都に通うようになった著者の個人的な体験や友人知人の話、京都の歴史に関することなどを綴ったエッセイ集。
世界思想社のWEBマガジン「せかいしそう」に2020年3月から2021年12月まで連載した文章に、書き下ろし1本とインタビュー3本を加えてまとめている。
いわゆる京都観光や名所旧跡案内とは違うので「京都不案内」というタイトルにしたのだろう。前半、「樹木気功で身体を治す」「バスと自転車」「ゲストハウスとアパート探し」「カフェとシネマ」「がらがらの京都」など、どれも具体的で面白い。
ただ、後半は学者・文化人仲間の話が多くなってきて今ひとつという印象だった。有名人でなければ入れない世界といった感じがする。
インタビューでは法然院の貫主、梶田真章さんの話が良かった。
昨日も仏教講座があってみんなで話が弾みました。みなさん、いろいろと活発にご意見をおっしゃるので、おっしゃる場があるということはいいことやな、と。読書会もやっています。わかりあうんじゃなくて、わかりあえないことをわかりあうために。
スポーツ選手はオリンピックなどで金メダルを取ると、「努力したらかなうということがわかった」とおっしゃいます。でも、その一方で努力してもかなわない人が無数にいらっしゃる。そのほうも伝えていかないと、なかなかつらい人も多いかなと思います。
法然院は河野裕子さんのお墓と歌碑のあるところ。もう少し涼しくなったら、また訪ねてみたい。
2022年12月10日、世界思想社、1600円。