あなたは御自分の詩がいいかどうかをお尋ねになる。あなたは私にお尋ねになる。前にはほかの人にお尋ねになった。あなたは雑誌に詩をお送りになる。ほかの詩と比べてごらんになる。(…)そんなことは一切おやめなさい。あなたは外へ眼を向けていらっしゃる、だが何よりも今、あなたのなさってはいけないことがそれなのです。誰もあなたに助言したり手助けしたりすることはできません。
/リルケ『若き詩人への手紙』(高安国世訳)
本集所載の歌によつて僕ははじめて兎に角一人の作家としての自覚と責任とを持つやうになつて来たことである。それまでは歌に関する限り僕は全く土屋文明先生に頼り切つてゐた形であつた。それが敗戦後はじめての大阪アララギ歌会に先生が見えられた時のことであつた、久しく歌を休んでゐたために自信のなかつた僕は、帰途先生に「歌を見て頂けないでせうか」とお願ひした所、「自分の歌を人に見てもらふなどといふことは止せ、自分らも左千夫先生の歿後それぞれに工夫をしてやつて来たのだ。やれない筈がない。」といふやうな意味のお答へを得て大変驚くと共に心打たれたのであつた。
/高安国世『真実』巻末小記
自分の歌の評価をひとに委ねない。他人に依存せず自分で考える。それは、自分の人生を自分で決めるのと同じことなのだと思う。