2023年08月21日

二人子

小池光の歌集『日々の思い出』(1988)にこんな歌がある。

自転車の前後に乗せて二人子にわれは歌へる水師営のうた

まだ小さな二人の娘と自転車に三人乗りしている。「水師営のうた」は佐佐木信綱作詞の唱歌「水師営の会見」。小池の祖父は日露戦争に出征しており、その関連の歌も多い。

子どもに古い日露戦争の歌を聞かせているのがおもしろい。ほのぼのとした歌という印象で読んでいた。

でも、ふと気になって「水師営の会見」の歌詞を調べてみると、ステッセル将軍と乃木大将の会話が歌詞になっている部分がある。

五、かたち正して言ひ出でぬ、
   『此の方面の戦闘に
     二子を失ひ給ひつる
       閣下の心如何にぞ。』と。

六、『二人の我が子それぞれに
   死所を得たるを喜べり。
     これぞ武門の面目。』と、
       大将答力あり。

何と、乃木希典の二人の息子(勝典、保典)の戦死が話題になっているのであった。

小池の歌は、なるほど、自分と二人の娘の関係を、乃木将軍と二人の息子の関係に対比させているのか! 単なるほのぼの歌ではなかったのだ。
posted by 松村正直 at 23:09| Comment(3) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
乃木将軍が二人の息子を亡くしたという話を私は浪曲で知りました。『乃木大将 信州墓参』という外題で、松浦四郎若師匠や天光軒満月師匠の口演をYouTubeで視聴することができます。
その中に「一人息子と泣いてはすまぬ/二人亡くせし親もある」という当時の俗謡が取り入れられています。俗謡なので歌詞に細かい異同はあるようですが、「水師営の会見」然り、そういう歌が必要とされたのでしょうね。
Posted by 小竹 哲 at 2023年08月22日 09:19
例によって、早速訂正です。

【誤】乃木大将 信州墓参
 ↓
【正】乃木将軍 信州墓参

いつもすみません(汗)。
Posted by 小竹 哲 at 2023年08月22日 09:24
小竹さん、コメントありがとうございます。
私の家の近くの明治天皇陵のそばに乃木将軍を祀った乃木神社(1916年創建)があります。境内には記念館や宝物館などがあり、「水師営の会見」に出てくる棗の木の子木も植えられています。
Posted by 松村正直 at 2023年08月23日 13:01
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。