「たもかく本の店」で購入した古本。
「お宿吉水」を経営する著者が、季節感を大切にした昔ながらの暮らしを現代に生かすことを提唱している。
五感を養うということは、生きていく判断力を身に付けることにも繋がります。それは、大人になるにせよ、年をとるにせよ、そのいずれの時も自分にとっては初めての経験ですから、その時過去の体験からの判断力が役に立つのです。
私は宿屋を始めてから、野菜や建材を求めて地方に出かけることが多くなりました。その出かけた経験から、地方に元気がないと感じずにはいられません。
改めてロハスやオーガニックという横文字の言葉でなく、自然、持続可能な暮らし、ありがたい、もったいないなどの意味を含む言葉はないものかと、さんざん考えた結果、「ちょっと前の日本の暮らし」という言葉に行き着きました。
少しお説教っぽいところや日本の伝統礼賛的な部分が気になるものの、基本的な考え方には賛同する点が多い。とはいえ、37度、38度の気温が続くこの夏の猛暑。
夏には縁側に風鈴が下げられ、涼しげな音が鳴っていました。打ち水をした庭や道端には縁台が出され、団扇片手に将棋を指す姿がありました。行水を喜ぶ子供の声が聞こえる昼下がり、蚊帳の中で夕立の雷の過ぎるのを待つ不安な時など。
こんな昔の光景は取り戻すのは、もう不可能だとも思う。
2010年11月10日、中公新書ラクレ、740円。