「婦人之友」2018年7月号、2020年3月号、6月号に掲載された記事をまとめたエッセイ&ノンフィクション。
3人の子を育てる著者は、ニワトリを飼う計画を実行に移す長男に戸惑いつつも、次第にニワトリのいる生活になじんでいく。子育てや家族をめぐる問題に悩み、食べることや肉について考える日々。
子どもたちそれぞれに、大事なこと、必要なことがあって、彼らの生きている時間は彼らのもので、親といえども侵してはならない一線があること。わかっていたつもりだった。けれど、その一線は目に見えるわけじゃない。互いに違うところに線をひいている。
スーパーで買う卵ならあまり気にならないのに、うちのニワトリには無農薬の飼料を与えたいと思う。この心境の違いは何だろう。そもそもスーパーで見えるのは、現物としての卵と値段という数字だけ。
養う≠ニいうことには、お金≠ニ権限≠ェ付随する。お金≠ニ権限=Bどちらも子どもが太刀打ちできない力であり、親元で彼らを自由にさせない力である。だから、長男はそうした空気が家の中でまかり通るのを許さないとばかりに、猛然と立ち向かってくる。〈言葉〉を武器に。
親子の協力する姿とともに、激しい相克の様子もありのままに描かれている。ニワトリを飼ったことはないけれど、親子関係については思い当たることや教えられることがとても多かった。
2021年11月30日、婦人之友社、1450円。