2008年から共同通信で「生きもの大好き」の連載を750回にわたって続けている著者が、動物園や水族館について記した本。全国各地を訪れて飼育担当者の話を聞き、歴史や現状、今後の課題について考察している。
アニマルウェルフェア(動物の福祉)、アニマルライツ(動物の権利)、環境エンリッチメント、生息環境展示、野生動物保護など、近年さまざまな観点から動物園の問題が指摘されるようになっている。
たとえば、ゾウは群れで暮らす動物だから、単独のオスメスのペアだけで飼うことは許されない。いま一頭か二頭だけで飼育している動物園は、それらの個体が死んだらゾウの飼育を諦めるか、現状よりはるかに広い土地と屋内施設を用意しなくてはならない。
動物園はこれからどのような道を進むべきなのか。人間と動物はどのような関係を結ぶことができるのか。いつかまた動物園に行って、ゆっくりと考えてみたい。
2022年11月10日、ちくま新書、940円。
松村さんの歌<それ以上言わない人とそれ以上聞かない僕に静かに雪は>を愛暗していたまだ少し若かったころを思い出しました。
『ルポ動物園』は、大上段に構えたり知ったかぶりをすることなく、迷い、悩み、自らに問い掛けながら書いている姿勢が印象的でした。
〈それ以上…〉の歌を引いていただき驚きました。まだ20代だった頃の歌で、何とも懐かしいです。