2023年03月17日

『温泉めぐり』(その3)

田山花袋は短歌(旧派和歌)もやっていた人で、紀行文のところどころに歌が出てくる。全部で二十数首ある。

玉くしけ箱根の山の朝日影雪はつもれど春めきにけり
この紙につきて行きませ戸隠(とがくし)の山に通へる路(みち)はこの路
紀の海の波よりも猶けはしきは熊野の奥の山路なりけり
はるばると二荒(ふたら)高原那須がねにふりつもりたる雪ぞさやけき
つてあらば都の人につげてまし今日白河の関は越えぬと

以前、「続・文学者の短歌」で柳田国男の短歌を取り上げたことがあるが、田山と柳田は同じ先生から和歌を教わる同門であった。柳田も紀行文に自作の短歌をよく載せている。

私の歌の師匠は、性は松浦、名は辰男、桂園派の直系で、景恒の門下、松波遊山翁はその友であった。

松浦辰男(1844‐1909)は「最後の桂園派歌人」とも呼ばれる人。「景恒」は香川景恒(1823‐1866)のことで、桂園派の祖香川景樹(1768‐1843)の子である。松波遊山(資之、1831‐1906)は香川景樹の弟子。柳田国男の兄の井上通泰は、この松波の門下であった。

旧派歌人の系譜について調べるといろいろ面白そうなのだけれど、残念ながら今ではあまり手軽に読むことができない。

posted by 松村正直 at 09:39| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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