2023年02月21日

竹内早希子『巨大おけを絶やすな!』


副題は「日本の食文化を未来へつなぐ」。

かつては酒や醤油の醸造に広く使われていた巨大な木桶も、今では需要が減り桶を作る職人が絶えようとしている。それを何とか継承しようと小豆島のヤマロク醤油が2012年に始めた「木桶職人復活プロジェクト」を描いた本。
https://www.s-shoyu.com/kioke

いま、日本で生産されている醤油のうち、木桶でつくられている醤油の割合はどのくらいだと思いますか?答えは、たったの一パーセント。九九パーセントの醤油は、ステンレス製、あるいはFRP(強化繊維入りプラスチック)やコンクリート、ホーローなどのタンクでつくられています。
蔵独特の微生物は、古くから木桶で醤油や味噌をつくってきた醸造蔵にとってなくてはならない宝物で、その微生物がすみつく木桶も大切な財産です。
現在、国内に残っている木桶は四五〇〇〜四七〇〇本あるといわれていますが、そのうち一一〇〇本が小豆島に集中しています。

高さや長径が2メートルもある大桶を作るには、樹齢100年以上の杉と長さ15メートル以上の真竹が必要になる。単に桶作りの技術を伝えるだけでは継承できないのだ。

もともとは、たが屋というたがを専門につくる職人がいました。しかし、桶がつくられなくなって、たが屋も成り立たなくなり、一九九六年、日本で最後のたが職人が廃業し、いなくなってしまいました。
一〇〇年以上前の人が、後の世代のことを考えて苗木を植え、山の手入れをするところから、木桶づくりは始まっています。

多くの人々が長い時間をかけて生み出してきた「木桶」の文化。それを失うことは、私たちの生活や歴史の一部を失うことでもある。そうした問題に深く気付かせてくれる内容であった。

2023年1月20日、岩波ジュニア新書、860円。

posted by 松村正直 at 11:51| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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