京都に現存する13の代表的な近現代建築を取り上げて解説した本。
・京都国立博物館明治古都館(片山東熊)
・京都文化博物館別館(辰野金吾)
・本願寺伝道院(伊東忠太)
・京都府立図書館(武田五一)
・東華菜館本店(ウィリアム・メレル・ヴォーリズ)
・ウェスティン都ホテル京都(村野藤吾)
・京都タワービル(山田守)
・国立京都国際会館(大谷幸夫)
・京都信用金庫(菊竹清訓)
・TIME'S(安藤忠雄)
・京都駅ビル(原広司)
・ロームシアター京都(前川國男)
・京都京セラ美術館(前田健二郎)
最後の2つは、元の建築だけでなく、近年行われた大規模な改修についても言及している。
「近現代」を実感するのに「建築」は良い手段である。なぜか。実体であるからだ。今につながるものがどの時代に、どのようにできたのか。当時の考え方がどのように違っているのか。それ以前をどう捉えたのか。目に見えて分かる。
なるほど。京都市内に点在する建築物は、そのまま近現代建築史の実物見本にもなっているわけだ。
旧日本銀行京都支店が面しているのは、今も昔も、歩行を中心としたストリートなのである。したがって、構成が左右対称であることはあまり意識されない。(京都文化博物館別館)
ホテルは時代に即した機能を要求される。したがって、建物の更新が必要となる。だが、全面的に休業するのは、経営上も社会信頼上も好ましくない。よって、ある館の営業を続け、別の館を建て替えることが多い。しばしば異なる時代の建物が敷地内に併存しているのは、そのためだ。ホテルにとって、不統一が状態だと言える。(ウェスティン都ホテル京都)
まだ仕上がるように思えてしまうのは、強さが足らないからだ。そこで、物自体で完成した感覚を与える打放しコンクリートが目指された。(TIME'S)
今、朝日新聞の連載「語る 人生の贈りもの」に、ちょうど原広司が出ているところ。こういう偶然も嬉しい。
2021年9月15日、平凡社新書、860円。